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キリストと共に生きる [説教全文]

ローマの信徒への手紙678

 

死んだ者は、罪から解放されています。わたしたちは、キリストと共に死んだのなら、キリストと共に生きることにもなると信じます。(新共同訳)

 

パウロが手紙を書き送ったローマのキリスト信徒の人たちは、旧約聖書の物語を知っていました。現代のわたしたちは、聖書と言えば、旧約聖書と新約聖書を合わせて聖書(正典)と呼んでいます。しかし、パウロの時代は、聖書と言えば旧約聖書のことでした。最初期のキリスト信徒は、旧約聖書を教典として読んでいたのでした。そして、パウロとローマのキリスト信徒の人たちの接点は、その旧約聖書の物語でした。

何年か前に教会のホームページに次のようなコラムを載せました。「今までに一度は、自分とはなんなのか、あるいは、この世界の不思議さに思いを巡らしたことがあるのではないでしょうか。聖書を最初に紐解くと、この世界の創造の物語が綴られています。最初に、神によって「光」が創られ、空と海、大地、草木、太陽と月星、動物、そして、最後に人間が創られました。もちろんこれらの物語は、神話です。理性的に考えると荒唐無稽な物語かもしれません。しかし、聖書は科学の本ではありません。自分について、この世界についての存在の不思議さに目を向ける時、存在の背後に何かの意志を感じます。この創造の物語を伝えた古代の人たちは、そこに神の意志を見ていたのだと思います。そして、それは自分たちに対する神の好意として受け取ったのだと思います。」。

創造物語の中で、最初の人であるアダムは、神が土をこねて創られ、神が息を吹きかけると生きたものとなったと書かれています。そして、エヴァが創られました。しかし、このアダムとエヴァは、なに不自由なく暮らしていたのに神から禁じられていた木の実を食べて死が人間に運命づけられたのでした。

この物語から勿論いろいろなことが思い浮かび考えることができますが、その一つとして考えられるのは、古代の人たちは人間が神と等しいものになろうとすると言うことに神への逆らいつまり罪というものを感じていたのではないかと思います。罪と言うのは、つまり、人の生き死を自分の手に握り、自ら思うがままにすることができるようにしようとする思いのことです。古代の人たちは、先人たちがやがて死に土にかえっていくのを見てやがて人は、死に土にかえっていくことを運命づけられていくと言うことに自分たちではどうすることもできない人の生き死の現実を見ていたのだと思います。

現代の私たちは科学の進歩によって、どのように人が存在しているかが説明できるようになってきました。医学の進歩によって人の死が少しずつ遠のいていくかのように思えます。しかし、科学によっては、なぜ、人が存在しているのかは説明してくれません。何ひとつ人間の手によっては存在を造り出すことはできないのです。そういった意味では、人間も含めてこの世界の存在は、すべてすでにそこにあったもの、どこまで行っても被造物なのです。そして、その存在を偶然の産物と見るか、神の意思と見るかは、私たち一人ひとりに任せられています。信仰者は、神話である創造物語を通して、人間も含めたこの世界の存在を神の意思と信じるのです。

「死んだ者は、罪から解放されています。」とパウロは今日の個所で言います。それは、つまり、人の生き死を自分の手の中にあるとする自分が死ぬと言うことなのだと思います。命が自分のものであるというあり方に死んで、自分のものでなく神のものであると信じることによってキリストと共に生きることになるのだと思います。

この世のものはすべて神によって創られた。その素朴な思いになかなか思い至らないのが私たち現代に生きている者の現実です。しかし、私たちと同じ被造物として生きられたキリストは、私たちと共に今も生きて下さり、私たちに寄り添っていてくださっていることを信じたいと思います。

聖書を一か所お読みします。「主よ、苦難に襲われると/人々はあなたを求めます。あなたの懲らしめが彼らに臨むと/彼らはまじないを唱えます。妊婦に出産のときが近づくと/もだえ苦しみ、叫びます。主よ、わたしたちもあなたの御前で/このようでした。わたしたちははらみ、産みの苦しみをしました。しかしそれは風を産むようなものでした。救いを国にもたらすこともできず/地上に住む者を/産み出すこともできませんでした。あなたの死者が命を得/わたしのしかばねが立ち上がりますように。塵の中に住まう者よ、目を覚ませ、喜び歌え。あなたの送られる露は光の露。あなたは死霊の地にそれを降らせられます。」(イザヤ書2616節以下)。

(柴田良和)


<教会ホームページ>
東大阪キリスト教会(日本バプテスト連盟) (fc2.com)

<説教音声>
東大阪キリスト教会(日本バプテスト連盟) (fc2.com)

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