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キリスト・イエスに結ばれて [説教全文]

ローマの信徒への手紙611

 

このように、あなたがたも自分は罪に対して死んでいるが、キリスト・イエスに結ばれて、神に対して生きているのだと考えなさい。(新共同訳)

 

池田晶子という哲学者の方がおられます。なんでもご本人は哲学者ではなく文筆家と呼ばれることを望んでおられました。2007年に亡くなられましたが、「14歳からの哲学」という著書で有名な方です。この池田晶子さんの著書に「知ることより考えること」という著書があります。その著書のあとがきに次のように書かれています。「『知ることよりも考えること』とは、決して知ることの否定ではありません。考えるとは、本当のことを知るために考えるという以外にはあり得ない。しかし、きょうび「知る」とは、外的情報を(できるだけたくさん)取得することだとしかおもわれていない。取得するばかりで、誰も自ら考えていない。だから世の中こんなふうなのであります。」。なかなか辛辣な言葉ですが、確かに現代のわたしたちの周りでは情報に溢れています。知ろうと思えば、様々な本が手に入りますし、テレビやラジオをつければ情報が流れて来るでしょう。パソコンが使える方は、インターネットで調べれば、知りたい情報を知ることができます。

しかし、一つの物事や出来事をじっくりと考えると言うことをあまりしていないのが私たちの現状なのではないでしょうか。知り得た情報を鵜吞みにするのではなくじっくりと考えてみるということが、自分にとっても社会にとっても大切な事なのではないかとこの池田晶子さんの言葉から思わされます。

さて、今日の聖書の個所であるパウロの言葉は、「キリスト・イエスに結ばれて、神に対して生きているのだと考えなさい。」という言葉です。ここでパウロが勧めている「考えなさい」という言葉は、ギリシア語の言語では、ロギゾマイという言葉が使われています。この言葉は、ロゴスという名詞が動詞となったものです。このロゴスと言う言葉は、ヨハネによる福音書の最初の言葉である「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。」(ヨハネによる福音書11節)という文章で訳されている「言」です。この「言」と訳されている「ロゴス」という語には「理性、数を数えること」という意味が基本にあるから、この動詞は数学、経済用語として「数える」の意味が基本にあるようです。そこから比喩的な意味となって「考慮する」「熟考した上でそういう結論を出す」「丁寧に、よく考慮して、結論を出す」の意味になるということです。パウロはここでローマの信徒の人たちに「キリスト・イエスに結ばれて、神に対して生きている」ということを、その信仰の現実をしっかりと考えなさいと語っているのだと思います。

そしてその前提として「あなたがたも自分は罪に対して死んでいる」とパウロは言います。パウロは決して人間の罪の現実を軽くは見ていませんでした。そのことは、ローマの信徒への手紙の1章の言葉からうかがえます。人間の悪の現実から神に対する罪に支配されている人間の現実をパウロは良く知っていたものだと思われます。悪あるいは悪徳に関しては、パウロは次のように言っています。「あらゆる不義、悪、むさぼり、悪意に満ち、ねたみ、殺意、不和、欺き、邪念にあふれ、陰口を言い、人をそしり、神を憎み、人を侮り、高慢であり、大言を吐き、悪事をたくらみ、親に逆らい、無知、不誠実、無情、無慈悲です。」(ローマの信徒への手紙1 29節以下)。このような悪とされる思いから解放されると言うことが、「罪に対して死んでいる」と言うことなのだと思います。 

キリスト教だけでなく宗教と関係ない一般社会でも悪は、犯罪として罰せられます。しかし、悪と言っても一般社会では法律に定められた犯罪にしかに認められません。一般社会での悪は、相対的なものであり、時代により、国や地域により、社会状況により異なっています。しかし、パウロにおいては、悪の結果としての罪を、法律を守らない犯罪としてではなく、神が生きておられると言うことを前提として、その神と自分との関係がどうであるのかが問題とすると言うことです。「だれもかれも背き去った。皆ともに、汚れている。善を行う者はいない。ひとりもいない。」(詩編143節)。と詩編で書かれているように、人間の現実は、神との関係が破壊されているとパウロは考えるのです。

そのような人間の現実に対して、人間は救われなければならないとの信仰が生まれます。それゆえ、イエスはキリストである信仰告白し、キリストと結ばれているという信仰の中に生きていけるようにと祈ってまいりたいと思います。

(柴田良和)


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